FanFic 15⚔️

赤色の虹彩は君を見守る

20211027


以下本文

ハロウィンパロ#2
2話
前回に引き続きウォーレンスとミコト、追加でボニーを鷹系の亜人として登場させております。
ハロウィンパロディにつきアニメ脚本の原型はカケラもあるかわからないくらいですので了承の上お読みください。
また真宝ではなく魔法を行使しておりその設定は個人解釈によるものです。

 カラン。呼び鈴に反応して、姫が嬉しそうに扉へ向かう。
 俺は彼の言葉に甘えて、その小さな屋敷で共に暮らしていた。掃除や洗濯、食事の用意、結界の外へ狩りに出たりその他木の実や薬草を採取、……時折血液を分けてもらいながら暮らしている。また彼は度々、人里へ降りて薬を売るなどをして、人間と良好な関係を築いているようであった。まだ勉強中だからたいした薬はできないと謙遜していたが、人間達は深く感謝している様子である。姫たる才を見た気がした。
「随分と家が綺麗になったな、ミコト」
 扉を開いた先に立つその者は、足元まである長いマントのフードから頭部を晒す。君のおかげかなと彼は俺のほうを見て微笑んだ。
「ミコトから話には聞いているよ、ミスター……ウォーレンス、だったね」
 よろしくと言って手を差し出す彼の名はボニー、姫が師匠と呼んでいた者である。鷹系の亜人らしく、結界内へは姫の蝙蝠による案内で進入している。手を取って挨拶を返す。
「ボニー!」
「そのくっつき癖は、直っていないみたいだな」
「えー? ふふ」
 満更でもない柔らかな表情で、彼は姫の頭を撫でる。仲の良い雰囲気がすぐに見て取れる、微笑ましい光景だった。
「これからご飯なの! ウォーレンスが作ってくれてるから美味しいよ!」
 姫はボニーをさあさあと家の奥へ押し込んで座らせる。今日彼が来ることは知っていた。ふたりは蝙蝠を遣って手紙を届けあっているらしいからだ。だから食事はいつもより多く作ってある。人間達に分けてもらった野菜と森のきのこを入れたスープ、そしてチキンと潰したポテトをパイで包み焼き上げたものをテーブルに置く。美味しそうだと彼らは喜び、食前の挨拶をして食べ始めた。以前匿ってもらっていた村での手伝いのもろもろが、このように役立つのは悪い気がしない。
「連絡をとっているとはいえ、心配しないわけではないからね……。側でミコトの様子を見てくれている者がいるのは、私としてもありがたい」
「……いえそんな……」
 助かっているのは自分のほうだ。姫がいなければ、見つけてくれなければ、共に暮らそうと言ってくれなければ。俺はどこかで野垂れ死んでいたに違いない。失血死か、獣の餌か、もしくは人間に捕まって処刑にでもされただろうか。
 彼はやや間を置いて、しかしと言葉を続ける。
「君は、思っていたよりも痩せているんだな。獲るには簡単そうだ」
 スッと目を細めてこちらを見据える。発言も相まって一瞬、悍ましい感じが全身を硬直させる。
「ボニー!?」
 姫が驚いて匙を落としてしまったので、ボニーは笑って、冗談だと謝罪をする。両者が亜人であるがために対話により穏便に共生しているが、なんというか、蝙蝠として猛禽類の恐ろしさを味わった気がした。未だ残る動揺を押し込み、清潔な匙を姫に渡す。
「でも痩せているのは本当だ。血をしっかり摂っていないんだろう」
「……」
 指摘を否定できずに目を逸らしてしまう。姫には呆れのような疑いのような半目で見つめられている。事実、貧血で蹌踉としてしまうくらいになるまで摂取を拒み、弱った体を彼の魔法で物理的に屈服させられ、強制的に彼の血を口内へ流される事はしばしば……いや時折……稀に……起きる事もあった。
「それはもともと食事が嫌いなのか、それとも相手がミコトだから遠慮してしまうのか……いや答えなくてもいい」
 本題はそこではないと言うように質問を取り下げる。
「吸血蝙蝠族にとって、血の摂取は水の次に大事なもの。肉や野菜などの固形による食事は補うためもしくは単に娯楽のためでしかない。君は補うどころかメインにせんとしているようだが……」
 固形からのエネルギー変換をするには、それに特化していない吸血蝙蝠にはやはり限界があるだろう、という話である。血液を必要最低限摂っていれば狩猟や栽培は不必要なため食料争いには巻き込まれにくく、それは利点なようでもある。しかし実際には人に疎まれ採血は困難、加えて指摘の通り、姫の体はできるだけ傷付けてしまいたくない思いもある。または対象の嫌悪や拒絶に怯えるような感情が、食事を躊躇わせてしまう。
「しかし魔法を使えるようになれば、君の食事はもっと効率良くなる。少量でも問題なくなるということだ」
 それは君の望むことだろうとボニーが言い放つ。
「ミコトの魔法から少なからず影響を受けているはずだよ。ミコトと出会う以前よりは、力を引き出しやすくなっているはずだ」
 そうなのだろうかと、少し疑いと、少しの期待。やってみるかいという彼の問いに頷いてみる。

「っう……ぇ……」
 壁に凭れてみっともなく呻く。
 吐き気がする。頭痛はひどく、息も苦しい。足がちゃんと地についているのかさえもよく分からない。姫が心配そうに顔を伺ってくれるが、きっと酷い表情しか出来ない上、いつ吐出するか分からないのでできれば離れていてほしい。持ってきてくれた水はありがたく頂戴する。
「酔ってしまったか。慣れていないうちは少し、浮遊感と体温変化が激しい事もあるみたいだからね……」
 そういうことはその可能性を先に伝えておいていただきたいものだが、文句をつける元気も余裕もないし言えたところでどうしようもないので、喉元にある嘔気と共に奥へしまった。
 君の魔力に惹かれる動物が、遣いになってくれるはずさ。彼はそう言って出立した。

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Canna

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