FanFic 16⚔️

黄赤色の精霊は土をかく

20211116


以下本文

ハロウィンパロ#3
3話
引き続きウォーレンスとミコト、追加でポロンをかぼちゃ…ではなく益虫系の亜人(いわゆる精霊と呼ばれる)として登場させております。かぼちゃポロンから畑を守る者への着想を得たので原型はあります()
余談ですがサブタイトルの「かく」は「掻く」と「駆く」のふたつを掛くものでした。掘り返すのと走っていくのとですね。
ハロウィンパロディにつきアニメ脚本の原型はカケラもあるかわからないくらいですので了承の上お読みください。
また真宝ではなく魔法を行使しておりその設定は個人解釈によるものです。
なお、猪に出会っても立ち向かわず、静かにその場を離れてください。急に走り出したり背を見せたりすると追って来てしまうことがあります。武器になる物を振り上げて見せたり、投げつけてしまうと、逆上して襲いかかってくることがあり危険です。

「ごめんなさいミコトさん……最近はなんだか畑の調子が悪く……」
「そうなんだ……」
 定期的な村への訪問。調合した薬や草木の情報との引き換えに、人間達が育てている作物を頂くことが多い。他にも料理のレシピを教えて貰ったり、大きな家具などはあの屋敷にはあまり置くことができないが小さな花束やリースを受け取ることがある。
 姫は、気にしないでとその者に微笑んで慰める。続けて、畑を調べさせてもらえるよう彼がお願いをすると、村人は是非と快く承諾した。魔力的何かが影響しているとすれば、人間の目ではよくわからずとも魔法に馴染み深い亜人であれば気付くことがあるかもしれない。
「あっミコトさんあとでうちに寄ってよー」
「うん!」
 人気者だ。信頼されている。自分はほとんど飾りみたいなもので、していることと言えば村までの森の獣を警戒するくらいだ。
「んー……?」
 姫が作物の様子を見て、なんだか変だと首を傾げる。確かに、土から妙な感じがある。微妙な、におい。水分量の減った林檎を食べた時みたいな感じだ。足りないんだ。今回の場合は、魔力の含有量が無に近い。
「うわわわわわわわ!!」
 誰かの叫び声が、森の中から近付いてくる。そのほうに目をやれば、子供がひとり、猪に追われているのを見付けた。必死に逃げている彼は、自分がどこへ向かっているのかもよくわかっていなそうではあるが、着実にこちらへ近付いている。
「わ、えっとえっと……!!?」
 そのまま畑に入って荒らされるのは困る。
 手の平に意識を集中すると、細いダイヤ型のカケラが生み出された。俺は興奮状態の猪に向かってそれを投げ飛ばすと、前脚にそれが刺さって猪の意識が子供から外れる。猪はいちどその場で暴れるも、だんだんとふらついて、最終的にばたりと倒れ込んでしまった。カケラは血管に到達した時点で体内に浸透、神経の活動を抑制する方向へ作用する。細く小さい魔力片なので出血するような怪我にはなり得ない。起きた頃には興奮もおさまっているだろう、それまで保護してあとで森の中へ帰してやることにする。きっと子供が刺激してしまったのだろう。挙げ句眠らせてしまって、こちらの勝手を申し訳ない──などと狩をしていない今だから思うのはなんて都合の良いことであろうか。
 魔法は使えるようになったばかりだが、確かにしばらく血を摂っていなくてもかなりもつようになった気はするし、先程のようなやり方で傷を付ける際の痛みも軽減できるので少しは気が楽になった。魔法の訓練をしていなければ、作物の様子を見ても魔力の含有量がどうだなんて違和感を抱けなかったかもしれない。
「ありがとうウォーレンス!」
 姫のほうを振り返ると、転んで顔を地面に打ち付けている子供の姿があった。姫が怪我はないかと問うので、無事を伝えて彼の隣へ戻る。
「いたたた……ありがとうえっと……わ、森の外まで来ちゃってたー!」
 起き上がった子供がきょろきょろと辺りを見渡したかと思えばまた慌てふためくので、姫が心配して大丈夫と声をかける。
「え、あ、いやもう全然平気! なんなら作戦通りっていうか、このあとすごい魔法をお見舞いする予定だったし、この辺まで来たのももともと用事あったし? ま、でも手助けしてくれたのは感謝しとかないとね?」
 やや早口でそう捲し立てられ、姫が困惑しつつかろうじて、うん、と相槌を打つ。
「僕はポロン! えーっと、うーんと、狩人!」
「狩人」
「狩人……?」
 言い淀み方とか、その幼さでとか、多少疑問はあるが実際には狩人見習いなどなのだろうか。
 ぐるる。ポロンの腹が鳴った。あっ、と彼は照れたように自身の黄赤色の髪を撫でる。
「あははは……実はすっごい空腹……」
 姫が自分で持って来ていたクッキーの袋を開いて差し出してみるが、ううんと首を振られてしまったので、そっかと呟いて私の口と自身の口にひとつずつ取り出して袋を閉じる。
「今はもっと直接的なやつが……あ」
「ん?」
「あ、うん、やっぱり大丈夫な気がしてきた」
 ぐるる。彼の腹が再び鳴る。
「大丈夫じゃあなさそうですね」
「うん……。ね、ええとポロン? 実は作物が不作であまり採れていなくて……何か知らないかな?」
「作物? そういう時は大体……あ、うーん……」
 ポロンはまた何か躊躇して、発言をやめてしまう。そして彼は考え込みながら歩いていき、くんっと辺りの匂いを嗅いで何かを追う。
「この辺から……」
 彼は突然、よいしょよいしょと畑周辺の土を掘り返し始めた。何かを取り出したかと思えばそれについた土を払い、頬張り始める。
「え!!?」
 あっちにもこっちにも。同様に土を掘り何かを取り出して口の中へ入れていく。
「ふーお腹いっぱい」
 腹を撫でて休んでいる彼に近づく。何をしていたのかと姫が問うと、うーんと唸って言い淀んでしまった。
「亜人でしょう、隠さなくていい」
「そうだよ、私達も亜人なの」
 人間の多い場所に暮らす亜人は、見た目だけでいえばほとんど違いがなくわかりにくいものだ。
 なあんだと安心したような、喜んだような表情で立ち上がる。先よりも、声のトーンがいくらか明るい印象を受ける。
「僕は精霊だよ!」
「精霊?」
 精霊という言葉に聞き馴染みがなく不思議そうな顔をしている姫に、益虫系の亜人の事をそう呼ぶらしいことを伝えると、納得いったように頷いた。
「よくわかんないけど、植物の根からエネルギーを吸収しちゃう魔石があって、不作の畑の近くには埋まってることがあるんだあ」
 人が育てている作物を荒らしてしまう事から害虫に分類されている者達、そしてその害虫を妨害し益虫に分類されている者達。しかし独立した2種というわけではなく、性質は連続しているために場合によっては益虫にも害虫にもなり得るのだろう。彼等は魔力を含んだ魔石を消化する能力をもち、好物としているようである。だから害虫が魔石に魔力を溜めるために作物の近くに埋めて行くと、益虫がそれを見計らって横取りしてしまうという構図ができる。益虫はそれにより人間に感謝されるので、協力しているところもあるだろう。なお益虫系を精霊と呼ぶと前述したが、初め精霊は彼等全般を指していたものの、人間達はいつからか、害虫系の事を悪霊と呼ぶようになってしまっていたのである。
「ぬぬぬぬ……えい!」
 ポロンが両手の平を合わせて力を込める。そしてパッと開けば、そこには丸い塊が現れた。それを彼は宙へ放り投げ、畑の真上へ。
「畑はこれで大丈夫だよ!」
「おおー!」
 塊は細かい粒となって散り、畑に満遍なく降りかかって溶け込んでいく。
 ふふんと得意げに鼻を鳴らす彼に姫がさらに称賛すると、赤く頬を染めてはにかんだ。
「村の人に伝えに行こ! ポロンのことを紹介しなくっちゃあね!」
 姫は彼の手を引っ張って、民家のほうへ駆ける。

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Canna

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