FanFic 1⚔️ ⚠️

恍惚【パンウォ】

20171029


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以下本文

 赤い後ろ姿。金髪の少女ーーミコトの話を丁寧に聞く彼は、彼女のことをどう思っているのだろうか。彼に問うたら、従者としてそばにいるだけだ、だとか言うだろうというのは目に見えてわかるが。
 はっきり俺の気持ちを言えば、俺は、あいつーーウォーレンスのことを、恋愛対象として意識している。男同士なのに、と初めこそ思っていたが……どうやらこの感情は抑えることができないようで。皮肉なことに、奴のことを性的に見てしまうから俺自身にもどうしようもないこれに困惑している。
「パーン?」
 ウォーレンスの声がして、ぱっと顔を上げる。素直な身体が、脈を速めた。
「! なんだ?」
「なんだ、じゃない。大丈夫か?」
 俺の顔を覗き込む様子に一瞬どきりとして固まってしまう。ああもう、煩い。心臓が、煩い。
「あ……いや、大丈夫」
「もーパーンってば、そこでずっとぼーっとしちゃってさー」
 呆れたようにポロンが呟く。気づかなかったが、そんな長くいたのだろうか。 
「体調悪いなら部屋行ったほうがいいんじゃない?」
 心配そうな目で、ミコトが休養をすすめる。そうだよ、とポロンも続けて言う。
「だ、大丈夫だから。悪いな」
 調子が狂うんだ、お前の前だと。いつからか芽生えた感情が、お前を求めて止まない。
 お前を、愛するのを許してほしい。お前に愛されなくても、いいから。


「(ウォーレンス?)」
 白いテーブルと椅子が設置されたテラス。なにもないが外の空気が心地よい場所。そこにウォーレンスが座って、ゆっくり紅茶を嗜んでいる。どこも見つめていない目が、なんだかもどかしくなってウォーレンスに声をかける。
「仕事終わったんだ?」
「ん、ああ、パーンか。終わったよ」
 俺を認識するとすぐ視線を戻して、一口、紅茶を口に含む。
 もっと、俺を見てくれーー
 言えるわけない、といつも通りウォーレンスへの感情を心の奥に押し込む。
「パーン? 何か用があるんじゃないのか?」
「あ……ああ、用とかじゃないが、ただ、お前がいたから」
「そうか? 話したそうにしていると思ったんだが」
「え?」
「いや、昼間のな。悩みとか相談なら、今だったら聞けるが」
 普段のつんとしたものはなく、真剣にこちらを窺う。受動的なその視線に触発されて奥底からじわりと奮い立つ。
「パーン?」
 愛する者が、視線をこちらに向けて、心配そうに見つめてくれている。名前を、呼んでいる。
 抱きたいーー
 どっと沸き立つ、どろどろした感情が思考を侵食していく。
「ウォーレンスは、ミコトのことどう思ってる」
 ずっと、気になっていたことを聞いてみる。
「……どう、とは」
「好きかどうかってこと」
「それは、恋愛感情でのことか?」
「ああ」
 彼が、ミコトのことを好いているなら、俺は諦めるしかないだろう。別の方に、それもミコトに向いた彼の気持ちをこちらに向けられる自信は、ない。
「はぁ、私はミコト様の世話係として使えているだけだ。そもそも姫君と執事では、そのような感情、許されまい」
 予想通りの言葉。
「立場は、関係ないだろ」
「……とにかく、姫に対してそのようには思っていない」
 はぁ、とため息をつかれる。それが本当なら、俺はお前を愛しても、いいだろうか。諦めなくても、いいだろうか。
「お前は? パーンはどうなんだ?」
「は?」
「お前が、ミコト様に対して恋愛感情を抱いているから聞いたのだと思ってな。違うのか?」
「………違う。俺は……俺が好きなのは………」
「ほう、他に好きな人がいるのか」
 何も知らない、興味を持った目が、俺を見る。
「どうした、固まって」
「……じゃあ、俺のことは、どう思ってる」
「は?」
「好きか、どうかって、こと。恋愛感情、として」
「は、なにを言ってーー」
 困惑した顔の奴の顎を掴み上げる。キスでもできそうなくらい近づいてウォーレンスをみつめる。
「な、んの、つもり、だ」
 緊張して強張った肩が上がっている。やめろと言わんばかりに俺の手首を握りしめる手が、少し震えているように感じた。
 もっと、俺を見てくれーー
「あとで、俺の部屋に来い」
「は、ちょっ、おい!」

 部屋の外からノックされた木製の扉は軽快な音を数度奏でた。
「(きて、くれた、のか?)」
 どきどきと胸を昂らせて扉を開ける。期待通りの赤い服と、外に跳ねた茶髪が目に入る。何も知らない顔でお前は俺を見つめる。
「………無防備、だな、あんなことされたあとに」
「は?」
 呼んだのはお前じゃないかと呆れたように吐きこぼす。パーンはウォーレンスの腕を掴み、部屋に入れるように引き寄せた。
「なんなんだ?」
 ため息をついて顔をしかめている。意を決してごくり、唾を飲み込む。
「俺が好きなのは……ウォーレンス、お前、なんだよ。……気持ち悪いだろ、仲間……なのに、こんな……でも、おさえ、られなくて。ごめん、ごめんな」
「お、落ち着け、大丈夫か」
 いまだウォーレンスの腕を掴む俺の手を、振り払わずにいてくれてるのは、彼の優しさ、だろうか。
「拒まない、のな」
「……驚きは、する。だが、謝ることではないのではないか?」
 そう言いながら頭を撫でるのは、誘っているのか、こいつの素なのか。
「……そう、言ってくれんだな。じゃあ、もっと、お前に深入りしたら、受け入れて、くれるのか?」
「どういうことーー」
 ウォーレンスが言葉を言い終わるのも待たず、俺はウォーレンスの後頭部に片手を回し、引き寄せて唇を無理矢理重ねる。突然なことに戸惑いを隠せないウォーレンスの両手が、力無く俺の肩を掴んだ。布越しにかすかに伝わる熱が、心地よい。
「ッ……ん………」
 熱くなっていく身体が、もっと、もっとと彼を欲しているのを感じる。ぎゅっと抱きしめて、二人同時にベッドに倒れこむ。
「っは、ぁ、パ、んッ」
 理性など知らぬようにウォーレンスを襲う。腕を押さえつけ、脚に跨り、彼と唇を合わせる。ウォーレンスは扇情的に息を漏らす。舌をねじ込み、一方的に絡める。一度離れてみれば、真下の男がだらしなく息を乱している。
「ぁ……ぱー、ん、はぁ、あ」
 どくん、と獣のような感情が一気に溢れ始める。乱れかけた赤い執事服を脱がし、露わになった肌を撫でる。
「うぁ、やめ、パーンッ、ひ、ぅ」
 胸の突起物を舐めると、ぴくんと身体を跳ねらせる。
「かわいい」
「うる、さい、も、やめ、ぁ、ふ」
 口に含んで、ころころと舐め回す。多少は感じてくれているのか、途切れ途切れにウォーレンスは声を漏らしている。
 下半身の方に手を伸ばしてみると、布の上からでもわかるくらいにはウォーレンスも欲情していた。
「ぁ、や、ちが、ぱぁ、ん」
 動く気力をなくしたウォーレンスは、俺がズボンを脱がすことに抵抗しなかった。肉棒が露わになろうと、震えて涙を溜めるばかりで、さらに俺を煽る。咥え込んで舐めて弄ると、体を小さく跳ねらせて反応する。
「ぁ、あ゛」
 口の中に溢れる白濁。それを手に垂らして、ウォーレンスの尻の方に手を伸ばす。くちゅ、くちゅ、と音を立てながら穴に入れた指を動かす。
「もう、いいか」
「やめ、ろ、ぐ、ぅあ」
 後孔に、ゆっくりと俺の欲棒を押し込む。ウォーレンスは涙を溜めた目で、きっ、と俺を睨みつける。
 好意がなくてもいい。嫌悪でもいいから。俺を、お前の視界に、意識に入れてくれないか。傷付くことはわかってる。でも、好きなものを好きと言わせてくれ。
「ウォ、レンス、はぁっ、ぁ、好きだ、好き……」
「や、あ、ぅ」
 ごめん、ごめんな、と呟きながら、止まらない腰を欲のまま動かし続ける。ウォーレンスは中からの快感に何度か達してしまったようで、行為が終わる頃にはぐったりとしてしまうくらいだった。
「パーン」
 ベッドに寝転がって、しばらくぼーっとしていたウォーレンスが口を開いた。後ろめたさから離れ気味に寝ていた俺は、これから何を言われてしまうのかとどきどきしながら耳を傾ける。
「いつから、なんだ? いつから私を好いていた?」
「え、あ……、たぶん、結構前……魔族になる前、くらい、とか」
「そう、なのか……。気づかなくてすまなかった」
「いや、そんな気にすることでもない、だろ」
 また何か考えているのか、ウォーレンスは黙り込んでしまった。
「うぉ、ウォーレンス……?」
「……そんな、びくびくしなくてもいいだろう? 先ほどまでのお前はどこに行ったんだ。お前のおかげで私は腰が痛い」
「ッ、や、それ、は、ごめん……」
 本当に何をしてしまったんだ、と行為を思い出すと顔が熱くてしょうがない。
「……お前といる時間を、増やせなくもないぞ」
 その言葉に驚いて、横たわっていた俺は、ばっと起き上がり彼の方を見る。
「! い、いい、のか?」
「勿論、ミコト様や自分の仕事を優先させてもらうが」
「いや、それは構わない! 少しでも、いられるなら……!」
「ふ、随分と、嬉しそうにしてくれるんだな」
 こちらを振り返って、くすりと笑う様子に思わずどきりとする。
「だって、あんな、無理矢理、嫌、だったんじゃないかって」
「ふん、抵抗も受け入れずに最後までしたくせに」
「う……」
「まあ、悪くは、なかったぞ」
 向こうを向いて、ウォーレンスはそう言う。意外な言葉が発せられるものだから困惑した。
「いて、くれるのか、一緒に」
「……ああ」
 嬉しくて、飛び出してしまいそうなほど心臓が働く。恐る恐る彼の方に手を伸ばすと、何も言わず、抵抗もしない。そっと近付いて抱きしめ、俺らは眠りについた。
 きっと、お前の気持ちを向けさせてやる。お前が、俺に好きと言ってくれるまで、諦めたくない。そしてその後だって、俺はお前を愛し続けたい。そんなことを、お前は、許してくれるか?

Canna

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